
35歳以上の出産を、「高齢出産」と言います。以前は特別な出産のように話題に取り上げられてきましたが、最近は特に珍しいことではなくなってきました。
そうとはいえ、若い妊婦さんと比べて出産トラブルのリスクが高くなるのは事実です。定期検診を欠かさずに受診し、お腹の赤ちゃんの様子をチェックすることで不安が減ります。
高齢出産は、やっぱり流産や早産になりやすい?
卵子の老化
毎月の生理により、新しい卵子が作られていると思いがちですが、卵子は、女性が生まれる前から卵巣内に作られているものです。人間が加齢により老化するのと同じように、卵子も加齢により老化します。
卵子の老化が進むと、妊娠の確立が低くなりますし、妊娠できたとしても流産や早産の可能性が高くなります。
もっと詳しく!
>>「卵子の年齢=あなたの年齢!卵子の老化とは?」
妊娠初期から安定期までの出血や腹痛など、流産につながる兆候があった場合は、我慢せずに産婦人科を受診しましょう。
体内汚染が進むことも要因
高齢により、体内に有害物質が蓄積していくことも、流産、早産の原因であることがわかりました。有害物質による体内汚染だけが流産や早産の原因とは言えませんが、大きな要因であることは考えられます。
2回目以降の出産でも、同じリスク
第2子の出産でも、35歳を過ぎてからの高齢出産のリスクは初産の方と変わりません。
ただ、経産婦(一度出産を経験している妊婦さん)は、お産の時に子宮口が開きやすく、スムーズにお産が進むケースが多いです。
しかし、妊娠中の体調や胎児の様子は、回数ごとまったく異なりますので、経産婦で妊娠を経験しているからとはいえ、リスクは初産と同じです。
安心できるのはいつ?
流産の危険がゼロになる時期はありませんが、妊娠初期の12~13週頃には産婦人科で胎児の心拍(心臓の音)が確認できるので、そうなればひとまず安心といえます。
親戚や会社への妊娠の報告は、先走らずに、心拍が確認できた後に行うのがいいでしょう。
妊娠中のトラブルも増える?!
高齢妊娠の妊娠中のトラブルには下記のようなものがあります。
妊娠高血圧症候群
以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていたものです。
妊娠高血圧症行群とは、安定期以降にみられる妊娠中の症状で、高血圧になったり、タンパク尿がでたりします。
妊娠高血圧症候群の原因は、妊娠特有の血管トラブルだと言われています。
高齢出産の方がこの症状にかかりやすいのは、血管の老化が原因です。
つわりが落ち着いてきた後の、過度な暴飲暴食による体重の増加で起こる場合もあります。
妊娠高血圧症がひどくなると、胎盤への血液の流れが悪くなり、お腹の赤ちゃんに、十分な酸素と栄養を届けることができなくなります。医師から安静を告げられたら、胎盤へ多くの血液と栄養が届くように、できるだけ横になりましょう。
妊娠高血圧症候群の予防
- 減塩・低カロリー・高タンパクな食事を
薄味を心掛け、1日の塩分摂取量を10g以下に抑えましょう。
カルシウムも多めに摂り、ウォーキングなどの軽い運動をしましょう。 - ストレスの少ないマタニティライフを
ストレスによる交感神経の緊張から発症する場合も。
規則正しい生活をし、家事や仕事で無理をしないようにしましょう。
妊娠糖尿病
妊娠してから糖尿病にかかることを「妊娠糖尿病」といいます。
糖尿病とは、インスリンというホルモンの働きが不足し、血液中のブドウ糖が増える病気で、妊娠期間中の糖尿病は、妊娠高血圧症候群や、羊水過多、感染症などの合併症が出ることもあります。巨大児や低体重児、赤ちゃんの呼吸障害など、胎児に悪影響を与えるリスクがあります。
妊娠糖尿病の治療
妊娠糖尿病の基本的な治療は、通常の糖尿病と同じく、食事療法となります。
栄養バランスの良い食事で、1日の摂取カロリーを1600キロカロリー~1800キロカロリーに制限します。自宅での食事制限が難しい場合は、入院治療をする場合もあります。
妊娠後に糖尿病になった場合は、出産後に治ることがほとんどです。
前置胎盤
胎盤が普通よりも低い位置にできてしまい、子宮口を塞いでしまっている状態を前置胎盤(ぜんちたいばん)と言います。
高齢出産の方に多く見られる妊娠トラブルです。医師から診断を受けるのは、妊娠28週頃です。
胎盤と子宮がはがれて、突然の大出血を起こす場合もありますので、前置胎盤と診断されたら、とにかく安静を心掛けましょう。
前置胎盤は、胎児の成長とともに正常な胎盤の位置に治る場合があります。
出産までに胎盤の位置が治らない場合は、残念ながら帝王切開となります。

正常な胎盤位置

一部前置胎盤

辺縁前置胎盤

全前置胎盤
また、「低置胎盤」といって、胎盤は通常の位置よりも低めにあるものの、子宮口にかかっていない状態の症状は、通常分娩ができる可能性があります。出産までの定期検診を欠かさないようにしましょう。
先天異常リスクが何よりも不安!!
ダウン症候群の赤ちゃんが生まれる確率
高齢出産では、卵子の老化により、ダウン症候群など染色体異常による胎児の先天性異常のリスクが高くなることは事実です。
ダウン症候群は、健康な赤ちゃんと比べて知能や運動の能力の発達が遅れたり、合併症がみられたりします。40歳のママからダウン症児が生まれる確率は、全体の1%。20代のママに比べて10倍のリスクがあります。
出産前に胎児の先天的異常を調べる「出産前検査」
出産前検査とは、赤ちゃんがお腹にいるときに染色体異常などがあるかどうかを調べる検査です。従来の羊水検査に加え、2013年から「新型出生前診断」という検査が導入されました。

出産前検査の種類
- クアトロマーカー検査(母体血清マーカーテスト)
母体の血液に含まれる4つの成分を測定し、ダウン症候群などの、胎児の染色体異常の確率を調べる検査です。妊娠15週~21週までに調べます。 - 新型出生前診断
2013年から導入された検査方法で、35歳以上の高齢出産対象者は、妊娠10週から検査を受けることができます。母体の血液中に混入した赤ちゃんの血液から、DNA検査し、ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーの染色体異常の可能性が歩かないかを診断することができます。 - 羊水検査
染色体異常が確実にあるのかどうかを知るための検査です。
羊水中の赤ちゃんの細胞を調べ、より精密に検査します。妊娠15週以降に、妊婦さんの腹部に針を刺して羊水を抜き出して検査します。
検査にはリスクもあることを忘れないで
クアトロマーカテストや、新型出生前診断は、あくまでも胎児の染色体異常の「可能性の度合い」を診断する検査です。必ずしも「異常があります」ということではありません。これら2つの検査で、胎児に異常がある確率を知ったうえで、羊水検査を受けるのか、やめるのか、よくご夫婦で話し合ってください。
羊水検査は、前述のとおり、妊婦さんのお腹に針を刺して羊水を抜き取って検査をします。検査をしたことでの突然の破水、出血、流産、早産などの大きなリスクがあります。
後々、「こんなことになるなら、検査を受けなければよかった」という後悔をしないためにも、必ずご夫婦で話し合ってから検査を受けるかどうかを決めましょう。
高齢出産だと、お産は難産になる?!
通常、初めての出産にかかる分娩時間の平均は12~15時間程度と言われています。高齢出産だからと言って、難産になるという事ではありません。若い妊婦さんとそれほどリスクの大きさは変わりません。
だれしも、通常分娩でお産をしたいと思って出産計画を立てますが、いざ、産気づくとトラブルにより急遽帝王切開になった、などという事は、20代のお産でも40代のお産でも、分娩時のトラブルの数としては変わりありません。
しかし、妊娠高血圧症の妊婦さんや、妊娠糖尿病の妊婦さんは、前述したとおりリスクがあります。どちらの症状も、日々の食事に気を付けることで症状を改善できます。お腹の中の赤ちゃんの健康を一番に考えて、妊娠期間中は特にバランスのとれた食生活を心掛けてください。
高齢出産だからこそのメリットもある?
高齢出産は、現在はそう珍しいことではありません。不安ばかり抱えて、暗い顔をしてマタニティライフを送ることは、一番赤ちゃんの成長に悪影響を与えます。
30代、40代の夫婦は、20代の若い夫婦よりも社会的にも経済的にも裕福でしょうし、ゆとりのある育児が望めるはずです。人間としても、多くの経験を積み重ねてきた30代、40代だからこそ、おおらかな気持ちで我が子と接する事ができるので、子供がのびのびと素直に育つことも期待できます。
何よりも、「妊娠出産の喜びを強く感じることができる」というのは、高齢出産の一番のメリットです。待ちに待った、我が子の出産と成長を思い描きながら、幸せな気分で10か月のマタニティライフをぜひ楽しんでください。
<参考記事>